汗
1. 漢方医学的な汗の分類 頭汗、自汗、虚汗、盗汗、手足汗、驚汗、食汗、全身汗、冷汗、 睡眠の時の汗、緊張時の汗、胸の汗、ワキの汗、手足の汗、食事中の汗、頭の汗。
2. 汗の記伝 漢方医学では人体内に五つ種類の体液、すなわち五液があると考える。すなわち汗、鼻水、涙、涎(口から流れ落ちる唾)、唾(舌下に溜まる唾)だ。汗は自覚発汗と不自覚発汗に大きく分けられる。
# 自覚発汗
平素、汗が出ることを感じて視覚的に見える汗。
# 不自覚発汗
汗が流れることを感じず、視覚的に見えない汗。
◈ 汗の生理的な機能
①熱の発散と体温調節 ②体内の有害物質排出(例;アルコール、 重金属など) ③皮膚の潤沢機能
◈ 正常な汗
①運動の時に流れる汗 ②環境温度による汗
3. 多汗症
汗が異常にたくさん出る病気。ちょっとしたことや雨に打たれたように汗が流れる。汗が出るような条件もないのに、大量の汗が流れる。このような症状は多汗症に属する。多汗症の種類は下記のように分類する。
①頭汗症 : 頭に出る汗
②手足汗症 : 手足に出る汗。運動や環境温度にかかわらず手と足だけに汗が出て(心気虚)、しかも大量に出る。
原因:陽気虚症からなることが多い。
③自汗症 : 周辺の環境が暑くもなく、運動もしていない状態で、自らも暑いと感じていないのに、汗が出る。
④虚汗症 : 身体の気や血流が極度に弱くなって力無いのに出る冷たい汗。盗汗症 : 眠っている間だけ汗が出て、
目覚めれば止まる汗だ。ひどい場合は服が濡れるほど汗をかく。一般的に睡眠に入れば体温と呼吸が減少し、
体表の体温保持のために感染が収縮するはずなのに、むしろもっと汗が出る症状である。小児に多くみられる。
小児に盗汗症があれば、風邪を良くひくことにもな。原因 : 陰虚、血虚から起こる。
⑤食汗症: 熱いものや辛いものを食べても汗が出るが、食汗症の特徴は冷や飯や冷麺などの
冷たい食べ物を食べても汗が流れることだ。原因 : 脾気衛気虚弱から起こる。
⑥半身汗症 : 鼻と臍を中心にした左半身あるいは右半身に汗出る症状である。
原因 : 血液循環異常、中風, 幾許, 血虚等から起こる。
⑦心胸汗症 : (他の所には取ることは出ないで)胸側にだけ出る汗だ。
原因 : 心臓疾患, 狭心症, 心筋こうそくなどから起こる。
⑧鼻汗症 : 鼻面にだけ汗が出る症状だ。原因: 肺が弱いことから起こる。
⑨腋汗症 : わきだけに特に汗が出る症状。原因: 心虚から起こる。
⑩黄汗症 : 汗が衣服に触れると黄色くなる症状だ。原因: 脾胃湿熱から起こる。
⑪戦汗症 : 少しの精神的緊張があれば全身に汗が流れる症状だ。原因 : 心虚から起こる。
⑫下焦汗 : あるいは男性汗症ともいい、主に中年、老年の男性の睾丸の下に汗がたくさん出る。
ひどくなると嚢湿症になる。原因 : 心虚弱である。
◈ 原因と治療方法
以上のようなさまざまな症状に合わせて、漢方医学では下記のような原因と弁証によって治療方法が異なる。
①外感性汗症 : 風邪などで出る汗 ②鬱熱性汗症 : 鬱熱よって出る汗 ③陽虚性汗症 : 陽気虚となることで出る汗 ④気虚性汗症: 気が虚となって出る汗 ⑤陰血虚性汗症: 陰血が虚となって出る汗 ⑥気陰両虚性汗症 : 気陰が虚して出る汗 ⑦陰陽両虚性汗症 : 陰と陽が虚となって出る汗 ⑧於血性汗症 : 於血によって出る汗。
◈ 治療方法
以上で言及したような症状とまったく同じでも、患者の個人体質と症状によって治療方法が違うのが漢方医学の特徴である。すなわち漢方医学の弁証法、八綱弁証法を用いて臨床で多くの患者を治療した。特に、小、中、高生たちの手足に大量の汗が出るのは、試験時の緊張などでさらにひどくなり、試験にも差し支える。筆者は臨床でこのような患者たちをたくさん治療した。人体は汗が出なければならない時、汗が出なければならない。汗も新陳代謝の一つであり、循環がうまくいっているという証拠でもある。汗が流れなければならない時に流れないで、流れてはいけない時に流れたり、それがあまりにも大量だったりする場合、また反対にあまりにも汗が出ない場合も病気と言える。季節によって人体の汗の分泌が適度であり、人体の部位別に出ることが大切だ。
4. 無汗症
汗が出ない病気 : これは汗が出なければならない時に、汗が出ない病気である。
◈ 原因
①腠理閉実 : 汗腺が詰まってしまっている。 ②陽気衰弱 : 陽気が弱い ③陰津枯渇 : 陰津枯渇して貧血、あるいは出血過多で体液が不足で汗が出ないこと。
以上のような無汗症は漢方医学で原因治療して正常な汗が出るようにできる。
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